「輸入アサリ」の話題を別の観点から

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2005-03-02

一般船舶油濁賠償保障法の絡みで有名になった、輸入アサリの話題。

自民、下関港で北朝鮮産アサリ輸入の実態を調査(日経新聞:政治)
 自民党の対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム(菅義偉座長)は28日、北朝鮮からのアサリ輸入の実態を調べるため山口県下関市の下関港に調査団を派遣し、北朝鮮船籍の貨物船などを視察した。

 北朝鮮産アサリの8割は下関港から入るが、魚市場などで北朝鮮産と表示されるものは極めて少なく、流通ルートが不透明だった。

 山本一太氏は記者会見で「下関に入るアサリのほとんどは北朝鮮産だが、それを積んでくるのはほとんどが中国船。改正船舶油濁損害賠償保障法が適用されても、アサリの貿易に大きな影響を与えることはできない」と指摘。改正外為法の発動などによる北朝鮮への経済制裁が必要との考えを強調した。 (20:36)

北朝鮮に対する経済制裁になる・ならないの方向で議論が活発化している「アサリ」。一方で、産地偽装に関しても各メディアで話題になっている。

農相「北朝鮮産アサリ、原産地表示を調査」・偽装防止(日経新聞:経済)
 島村宜伸農相は1日の閣議後の記者会見で、北朝鮮から輸入したアサリが流通過程でどう原産地表示されているかの調査に乗り出したことを明らかにした。国内の小売店や卸売業者が北朝鮮産を国産と偽って販売しているとの情報があるため。偽装表示が見つかれば表示の改善を指導する。

 同省によると、北朝鮮からのアサリ輸入量(2003年)は約3万トンで、国内消費量の約4割に達する。輸入したアサリは鮮度回復のため、数カ月程度、国内の水槽などで保存されるケースが多く、国産と偽って出荷されやすい環境にあるという。 (10:34)

このように、どちらかというと北朝鮮に対する制裁という方向で話題が進んでいるこの問題。実は、この輸入アサリなどの水産動物に関して別の方向で「規制」をかける動きがある。それが、現在国会に提出されている「水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案」だ。

水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案(衆議院:議案本文)

上記議案に関するものを全部眺めても、よく分からないので、この法案に関係されるとされる日本ベントス学会の要望書より、端的に論点を抽出する。(筆者注:ベントス→海や湖沼・河川の水底で生活する生物。)

水産物の輸入にともなう外来ベントスの移出入の規制・管理に関する要望(日本ベントス学会:ニュース)
(要望のみ抽出)
  1. 増養殖用の水産生物種苗の国外からの輸入量とその経路、および国内での移動量とその経路を早急に把握しつつ、水産的営為による外来ベントスの移入の実態を、早急に把握すること。
  2. 水産的営為によってもたらされた外来ベントスによる在来生物への遺伝子浸透・遺伝的組成の撹乱、在来生態系や水産業への被害の実態を、早急に把握すること。
  3. 本年5月に制定された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」にもとづいて、被害が予想される外来ベントスに対しては、関連する機関や業界・業者に対して導入防止の措置を義務付け、モニタリングの体制を確立するなどの予防的かつ効果的な施策を講ずること。


おおよそ、今国会にて提出されている件の議案に関する話題は、上記論点にてお分かりになるであろう。

さて、日本ベントス学界が提出した要望書の文中には、このような記述も記載されている。アサリに限って論点を抽出すると以下の通り。

 また、アサリのように、日本在来種ではあっても中国・韓国・北朝鮮など外国産の個体が輸入されて日本各地に放流されているベントスが数多く存在します。その輸入水産生物の種苗の中にも、別の在来種の外国産個体が数多く混入しており、輸入水産物生物とともに野外に放たれています。こういった、外国産の個体が移入されている日本在来のベントスは、当学会などの調査で24種類以上確認されており、サキグロタマツメタ(軟体動物門巻貝綱)のように放流先で大発生してアサリなどの水産生物を食害するという問題が各地で発生しています。日本在来の個体群の遺伝的組成を撹乱する可能性も高く、その被害の拡大、特に、水産生物の食害による経済的打撃が懸念されています。このように、外来ベントスが引き起こす諸問題は、世界に誇る日本固有の食文化と水産文化を大きく改変させてしまう可能性があります。

もうひとつ、このような視点から。

アサリを食害する巻貝“サキグロタマツメタガイ”について(宮城県:水産研究開発センター)
(筆者注:記事は平成12年度の話題)
 昨年(平成11年)の4月19日、万石浦内にアサリ漁場を有する女川町漁協の職員が来所し、「干潟に見慣れない巻貝が大量に発生し、アサリの死殻も散乱している。」とサンプルを見せながら、調査を依頼されました。早速、図鑑で調べるとタマガイ科のサキグロタマツメタガイ(図1)と判明し、本県の外海域にも分布が見られるツメタガイの仲間であることがわかりました。しかし、本種の分布域は本来、中国、朝鮮半島であり、我が国では有明海や瀬戸内海の一部の水域とされています。専門家の話によると、大陸の遺存種* で国内では絶滅の危機に瀕しているとのことです。なぜ、そのような貝が東北地方の万石浦に忽然と姿を現したのでしょうか。近年、潮干狩り場などでは価格の安い中国産のアサリがよく播かれていることから、おそらく、これらに混じって移入されたものと推定されます。

詳細は全文を読んで頂きたい。確か、このような話題は日本テレビ「きょうの出来事」でも特集されていた記憶がある。(情報源失念。)この話題については、北朝鮮に対する間接的経済制裁の話題とは別の観点から、「日本の食文化、海産物に対する外来種からの脅威」という観点からも眺めることが重要である、と考えても差し支えないと思う。

北朝鮮に対する経済制裁ばかりに話題が集中しそうなので、このような観点も、私は提起したい。

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露出 : 2009年07月02日(木) 21:00 URL edit
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