空を見上げて

海の上のハロルド

志賀高原ストライプ1
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、11連と12連
        バイロン作  Shallot B.訳
11
館も、故郷も、財産も、土地も、
長らく奴の若い情欲を満たしてきた女たち、
隠者にして聖者を名乗る者でさえもグラつかせちまうような、
大きな青い瞳で綺麗な金髪と白い雪のような手をした
奴が大いに味わった女たちも、
どれも高い酒で溢れかえるゴブレットも、
豪奢へと誘うものをみんな
奴はためらいもなく置き去りにしたのさ、海を越えて
異教の地へと横断し、赤道を渡るそのために。

12
順風満帆、軽やかな片雲の風が吹いている。
生まれ故郷から漂泊させるのを喜んでいるようだ。
あっという間に視界からは白亜の岸壁がかすんでしまい、
すぐに取り巻いている泡へと消え入ってしまった。
そしてそれから、奴め、放浪したいと願ったことを
後悔していたかもしれないが、胸のなかでは
思想が静寂に包まれて眠っていたし、悔やみの一言だって
口をついたりはしなかった。他の連中は座ったまま泣きぬれて、
無神経なそよ風に吹かれて、しくしく嘆き続けていた。

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by Shallot Barbarina  at 21:05 |  バイロン訳詩 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

女に依存するハロルド

志賀高原白花
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、9連と10連
        バイロン作  Shallot B.訳
9
そして誰も奴を愛さなかった! ――大邸宅やら私室やらに
そこかしこから酒盛り仲間を呼び集めたが、
連中ときたら楽しい時間のおべっかつかいで
軽薄なたかりどもだと知れただけだった。
そうさ! 誰も奴を愛さなかったんだ、奴の愛しい情婦でさえも。
けども、女の関心事など煌びやかさと権力だけさ、
力と金のあるところにゃ、軽薄な愛の神さまがお仲間を見つける。
女の子たちなんて、蛾みたいなもんで、眩しい光にクラクラきちまう。
結局、金持ちの神さまが勝つところじゃ、熾天使さまが絶望してるのさ。

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貴公子ハロルドには母親があった。あの母親から餞別をうけるのを
彼は避けたが、忘れちゃあいなかった。
奴には大好きな姉ちゃんがいた、でも旅立ちの前には
彼女に会わなかった。
友達がいたにしても、誰にもサヨナラを言わなかった。
だからって、奴の胸が鋼でできてるなんて思わないでくれ。
ひとにぎりの大切なものを愛するひとは、
悲しみのなか、そんな別れに
本当に癒したいと願う心の傷が、裂けてゆくのを感じるだろう。

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by Shallot Barbarina  at 20:55 |  バイロン訳詩 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

ハロルドの出立理由

志賀高原黄花2
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、7連と8連
        バイロン作  Shallot B.訳
7
奴は親父の館を出た。
その館はだだっ広くて風格のある建物だった。
ひどく古かったが、ただ崩れ落ちそうなだけでなく、
薄汚れた回廊にはそれぞれ強い柱が支えていた。
修道院の円蓋よ! 悪徳に使われるなんて、なんて運命!
かつて迷信が巣食っていたところに
今は淫らな女のコたちが歌って笑ってると知られていた。
だから、もしも昔の話が本当で、聖者たちを中傷するんでなければ、
修道士たちはまた自分らの時代が来たんだと思うのかもしれない。

8
でも時々、狂おしいほどの狂喜の雰囲気にありながら
変な激痛が貴公子ハロルドの額をよぎったものだ。
それはまるで致命的な争いの記憶や
萎えた情熱が低く沈んでゆくように。
でもこのことは誰も知らなかったし、たぶん気にもしなかった。
だって奴は悲しみを口にすることでホッとするような
あけっぴろげでやぼったい心根の持ち主ではなかったし、
抑えられないこの悲しみが何であれ、
相談したり慰めたりしてくれる友達をほしいとも思わなかった。

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by Shallot Barbarina  at 20:45 |  バイロン訳詩 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

ハロルドの初恋

志賀高原くれがた
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、5連と6連
        バイロン作  Shallot B.訳
5
なぜって、奴は罪悪の長い迷宮を駆け抜けてきたのさ。
罪を犯したときも贖いもしなかった。
愛していたのはたったひとりだったのに、たくさん女を誑しこんだ。
そして、あぁ! 愛したひとは、奴のものにはならなかった。
幸せな女だ! 奴のキスときたら、どんなに貞淑なものだって
汚しちまうんだからさ、逃れられてよかったよ。
奴はきっと、すぐに卑猥な悦びを求め、彼女の魅力を棄て去って、
財布の穴を埋めるために、彼女の美しい土地をだめにして、
穏やかな家庭の安らぎを神妙に味わうことさえなかっただろうね。

6
そして今、貴公子ハロルドは心底嫌気が差していて、
酒盛り連中から逃れたかった。
欝な涙が流れ出したときも、
プライドが眼の中で涙を凍らせたんだと言われている。
奴はひとり、虚しくあれこれ想いながら、さまよい歩き、
生れた土地から出て行って、
海を越えて灼熱の風に吹かれようと決めた。
快楽に麻痺して、ほとんど悲嘆を求めてさえいた。
そして見慣れた景色を変えるためなら、死者の国さえ求めただろう。

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by Shallot Barbarina  at 20:39 |  バイロン訳詩 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

志賀高原9首

高原の紫
【志賀高原 9首】

川縁に 咲く花小さく ひめやかに 
   涼しい風に 揺られて笑う

夕暮れの 畳の上に 横たわる
   変わりし母の 夢のかけらが

わがままは 若さがゆえに それぞれの
   思いからまる 十五の夜なり

憧れる 男〈ひと〉はそこに 仲良しの
   男〈ひと〉はそばに 青春の夜

露天風呂 ものまねの芸が 笑い呼ぶ
   強さ 優しさ オン・ザ・ステージ

初めての 二晩徹夜で 眠りこけ
   朝の食堂 美人台無し

東京の 親友思う ここかしこ
   彼女がいたらと 仮定法過去

夏の日の 蒼深き空よ 悲しみよ
   濃い影落とす 緑の葉明よ

ぬばたまの 闇の深くに 飛び交うは
   頼りなき蛍か 太郎の未来〈ゆめ〉か

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by Shallot Barbarina  at 18:48 |  私的生活 |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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  • Author:Shallot Barbarina
  • 遠い港に憧れながら、詩に想いを馳せるのが日常。木漏れ日を求めて都会の海を彷徨っています…
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